「収入印紙って、領収書のどの辺りに貼ればいいの?」
「割り印ってどのように押せばいいんだろう…。」
契約書や領収書に貼る収入印紙。普段から触れる機会が少ないと、いざ収入印紙が必要となった時、どのように対処すればよいのか戸惑ってしまいますよね。
そこで、収入印紙の正しい貼り方、割り印の正しい捺し方を徹底解説します!
収入印紙の扱い方は、一度覚えてしまえば超簡単なんですよ。しっかりマスターして、収入印紙をスマートに使いこなしましょう。
尚、ここで言う『割り印』とは、収入印紙と文書にまたがって捺し、収入印紙が使用済みであることを示す印のこと。
正しくは『消印』と言いますが、ここでは分かりやすく『割り印』という言葉を使ってご説明しますね。
収入印紙の正しい貼り方
国税庁ホームページ『印紙税額の一覧表』に記載の通り、契約書や金額が5万円以上となる領収書には、原則として収入印紙を貼って印紙税を納めることが義務付けられています。
とは言え、いざ収入印紙を扱うとなると、貼る場所や貼り方などいろいろと疑問が生じてしまいますよね。
それでは、そんな疑問をスッキリさせるため、収入印紙の正しい貼り方を確認していきましょう。
収入印紙を貼る場所
「どこに貼ればいいんだろう…。」
収入印紙を貼る際に、最初に生じるのがこの疑問ですよね。そこでまず、収入印紙での納付方法について、『印紙税法』の記載内容を確認してみましょう。
課税文書の作成者は、次条から第十二条までの規定の適用を受ける場合を除き、当該課税文書に課されるべき印紙税に相当する金額の印紙(以下「相当印紙」という。)を、当該課税文書の作成の時までに、当該課税文書にはり付ける方法により、印紙税を納付しなければならない。
出典:印紙税法第8条第1項
上記の通り、印紙税法には、対象となる課税文書に収入印紙を貼りつけて印紙税を納めること、と記載されているだけ。実は、貼付け位置についての明確な規定はありません。契約書や領収書のどこに収入印紙を貼っても問題ないんです。
- 収入印紙の貼付け位置:規定なし
⇒文書の空いたスペースに貼ればOK
ただし、取り交わす契約書や領収書に予め貼付け位置が指定されている場合もありますので、その場合は指定に従ってくださいね。
また、特に貼付け位置の指定がない場合は、下記例の通り、契約書なら『左上』、領収書なら『右下』に貼るのが一般的とされていますよ。
契約書の場合
契約書の場合、収入印紙は表題の『左上』に貼るのが一般的です。
領収書の場合
領収書の場合、収入印紙は『右下』に貼るのが一般的です。
収入印紙を貼らなかった場合の『過怠税』に要注意!
「収入印紙を貼らなかったらどうなるの?」
これも収入印紙を扱う際に生じる疑問の一つですよね。収入印紙を貼らないと、何か刑罰の対象となるのでしょうか。
実は、対象となる課税文書に必要な収入印紙が貼られていなかった場合、次の通り『過怠税』が科されてしまうんです。
印紙税の納付は、通常、作成した課税文書に所定の額面の収入印紙をはり付け、印章又は署名で消印することによって行います。
この印紙をはり付ける方法によって印紙税を納付することとなる課税文書の作成者が、その納付すべき印紙税を課税文書の作成の時までに納付しなかった場合には、その納付しなかった印紙税の額とその2倍に相当する金額との合計額、すなわち当初に納付すべき印紙税の額の3倍に相当する過怠税が徴収されることになります。
ただし、調査を受ける前に、自主的に不納付を申し出たときは1.1倍に軽減されます。
過怠税により徴収される金額は次の通りとなりますよ。
- 収入印紙の貼り忘れなどで印紙税を納付しなかった場合:納付すべき印紙税額の3倍
- 不納付を自己申告した場合:納付すべき印紙税額の1.1倍
尚、課税文書に収入印紙を貼って印紙税を納付しなかった場合、故意か過失かに関係なく刑罰の対象となり、過怠税が徴収されてしまいますので注意しましょう。
収入印紙が必要となる金額
「今扱っている契約書の他に、どのような契約書や領収書が印紙税の対象となるんだろう?」
この疑問をスッキリ解決しておくことも重要ですよね。
「収入印紙が必要なことを知らなかったため、過怠税が課せられてしまった…。」
そんなことにならないための基礎知識として、収入印紙は、契約書や領収書の金額がいくらから必要になるのか、ここでしっかり確認しておきましょう。
契約書の場合
国税庁のホームページ『印紙税額の一覧表』に記載の通り、契約書では、1通または1冊につき、記載された契約金額が1万円以上の場合に収入印紙が必要となります。
- 契約書:契約金額1万円から収入印紙が必須
例えば、ビジネスシーンで使われる頻度の高い『請負に関する契約書』の場合、必要な印紙税額は次の通り定められています。
記載された契約金額 | 印紙税額 |
---|---|
1万円未満 | 非課税 |
1万円以上100万円以下 | 200円 |
100万円を超え200万円以下 | 400円 |
200万円を超え300万円以下 | 1,000円 |
300万円を超え500万円以下 | 2,000円 |
500万円を超え1,000万円以下 | 1万円 |
1,000万円を超え5,000万円以下 | 2万円 |
5,000万円を超え1億円以下 | 6万円 |
1億円を超え5億円以下 | 10万円 |
5億円を超え10億円以下 | 20万円 |
10億円を超え50億円以下 | 40万円 |
50億円を超える | 60万円 |
契約金額の記載のないもの | 200円 |
課税文書となるその他の契約書や印紙税額の詳細については、『国税庁ホームページ』を確認してくださいね。
領収書の場合
国税庁のホームページ『印紙税額の一覧表』に記載の通り、領収書では、1通または1冊につき、記載された受取金額が5万円以上の場合に収入印紙が必要となります。
- 領収書:受取金額5万円から収入印紙が必須
印紙税額は次の通り定められていますよ。
記載された受取金額 | 印紙税額 |
---|---|
5万円未満 | 非課税 |
5万円以上100万円以下 | 200円 |
100万円を超え200万円以下 | 400円 |
200万円を超え300万円以下 | 600円 |
300万円を超え500万円以下 | 1,000円 |
500万円を超え1,000万円以下 | 2,000円 |
1,000万円を超え2,000円以下 | 4,000円 |
2,000万円を超え3,000円以下 | 6,000円 |
3,000万円を超え5,000円以下 | 1万円 |
5,000万円を超え1億円以下 | 2万円 |
1億円を超え2億円以下 | 4万円 |
2億円を超え3億円以下 | 6万円 |
3億円を超え5億円以下 | 10万円 |
5億円を超え10億円以下 | 15万円 |
10億円を超える | 20万円 |
受取金額の記載のないもの | 200円 |
例えば、5万円以上100万円以下の領収書を発行する際は、200円の収入印紙を貼ることが必要です。
収入印紙を貼る際の注意点
貼付け位置と必要な印紙税額を確認したら、後は契約書や領収書にしっかり貼りつけるだけ…、といきたいところですが、収入印紙は貼るだけで完成するものではないので要注意!
収入印紙での納付方法について、さらに『印紙税法』の記載内容を確認していきましょう。
課税文書の作成者は、前項の規定により当該課税文書に印紙をはり付ける場合には、政令で定めるところにより、当該課税文書と印紙の彩紋とにかけ、判明に印紙を消さなければならない。
出典:印紙税法第8条第2項
上記の通り、収入印紙を正しく利用するためには、収入印紙と文書にまたがって割り印を押さなければならないのです。割り印を捺さないと刑罰の対象となってしまうため、注意が必要ですよ。
- 収入印紙には『割り印』が必須
※割り印が捺していない場合、刑罰の対象となるため要注意
割り印の捺し方や捺さなかった場合の刑罰については、次の項で詳しくご説明しますね。
収入印紙の割り印の捺し方
必要な印紙税額と貼付け位置を把握したら、後は、収入印紙の割り印についてしっかりマスターすれば完璧です。
割り印は、課税文書と収入印紙にまたがって捺すことで、収入印紙の再使用の防止と、印紙税を納付したことを証明する重要な役割を果たしているんですよ。
それでは早速、割り印について詳しく確認していきましょう。
割り印に使用できるもの
国税庁ホームページの『印紙税の手引き』には、割り印について次の通り記載されています。
課税文書の作成者は、原則として、課税文書に課されるべき印紙税相当額の収入印紙(以下、「印紙」といいます。)を貼り付ける方法により印紙税を納付します。
この場合には、自己またはその代理人、使用人その他従業員の印章又は署名で、その課税文書と印紙の彩紋とにかけて、判明に印紙を消す必要があります。(法8、令5)。
尚、単に「印」と表示したり、斜線を引いたりしてもそれは署名に当たりませんから、印紙を消したことにはなりません。
また、鉛筆で署名したもののように簡単に消し去ることができるものも、印紙を消したことにはなりません。
出典:印紙税の手引き
上記によると、割り印は、課税文書の作成者・代理人・使用人・その他従業員の印鑑を使用できる他、印鑑がない場合には、署名でも問題ないとされています。
- 割り印:印鑑または署名
⇒課税文書の作成者・代理人・使用人・従業者の印鑑または署名であれば、どのようなものでもOK!
さらに、国税庁ホームページ『印紙の消印の方法』に記載の通り、印鑑を使用する場合は、実印や認め印の他、氏名や名称などを表示した日付印、役職名や名称などを表示したゴム印などでもOKです。
また、署名する場合は、消えにくい油性ボールペンなどを使うようにしてください。簡単に消し去ることができる鉛筆などを使うことは禁止されていますよ。
割り印として使用できるものは次の通りです。
- 実印や認め印
- 日付印(社名・役職名・氏名などが表示されているもの)
- ゴム印(社名・役職名・氏名などが表示されているもの)
- シヤチハタ(社名・役職名・氏名などが表示されているもの)
- 油性ボールペン(署名する場合)など
収入印紙に割り印を捺す際は、上記のような消えないものを使用することと、誰が捺したのか一見して分かるように捺すことが重要です。
割り印を捺す時の注意点
割り印をせっかく捺しても、捺し方によっては無効となってしまう場合があるので注意が必要です。
そこでここからは、割り印を捺す際の注意点をしっかり把握して、正しい捺し方をマスターしていきましょう。
文書と収入印紙にまたがっていない割り印は無効
まず、『印紙税法第8条第2項』に記載の通り、割り印は、課税文書と印紙の彩紋とにかけ、判明に捺さなければならないとされています。
そのため、下記のように、課税文書と収入印紙にまたがって捺されていない割り印は無効となってしまいます。
- 収入印紙に割り印がかかっていないため無効
- 課税文書に割り印がかかっていないため無効
割り印は、必ず課税文書と収入印紙にしっかりまたがるように捺しましょう。
文書と収入印紙にまたがっていない割り印は無効
国税庁ホームページの『印紙の消印の方法』には、割り印を捺す際の注意点として、次の通り記載されています。
単に「印」と表示したり斜線を引いたりしてもそれは印章や署名には当たりませんから、消印したことにはなりません。
また、印紙は判明に消さなければならないこととされていますから、一見して誰が消印したかが明らかとなる程度に印章を押し又は署名することが必要であり、かつ、通常の方法では消印を取り去ることができないことが必要です。
したがって、鉛筆で署名したもののように簡単に消し去ることができるものは、消印をしたことにはなりません。
割り印は、一見して誰が捺したか分かるようにする必要があるため、印鑑や署名によって『印』とだけ表示したり、斜線を引いたりしただけの場合は無効となります。
また、簡単には消せないようにする必要があるため、鉛筆などで署名した割り印も無効となりますよ。
- 社名や氏名が入っていない印鑑や署名は無効
- 斜線などは無効
- 鉛筆など簡単に消し去れる割り印は無効
割り印は、必ず誰が捺したかが分かるようにすること、そして、署名する場合も油性ボールペンなど簡単には消えない物を使うようにしましょう!
割り印の正しい捺し方
割り印に使用できるものと注意点を把握したら、契約書と領収書へのそれぞれの割り印の捺し方を改めて確認していきましょう。
ちなみに、契約書や領収書を複数の人が共同して作成した場合、割り印は作成者のうち誰か一人が捺せばOKですよ。
消印は印紙の再使用を防止することを目的とするという趣旨のものですから、複数の人が共同して作成した文書に貼り付けた印紙は、その作成者のうち誰か1人の者が消せばよいことになっています。
例えば、甲と乙とが共同して作成した契約書については、甲と乙の双方が消印しても甲と乙のどちらか1人が消印しても差し支えありません(基通第64条)
出典:印紙の消印の方法
それでは早速、割り印の捺し方をご説明しますね。
契約書の場合
すでにご説明した通り、契約書の場合は、表題の『左上』に収入印紙を貼るのが一般的です。
下記のように、収入印紙と契約書にまたがって明確に割り印を捺してください。
領収書の場合
領収書の場合も、すでにご説明の通り、収入印紙は文書の『右下』に貼るのが一般的です。
下記のように、収入印紙と領収書にしっかりとまたがって割り印を捺してください。
割り印を失敗した場合の対処法
割り印を捺したものの、ズレてしまったり、薄くて見えにくくなってしまったりと、失敗してしまう場合もありますよね。
そんな時のために、失敗した場合の対処方法も把握しておきましょう。
違う位置に割り印を捺し直す
すでにご説明した取り、割り印を捺す位置は明確に定められていません。
そのため、収入印紙の右側へ捺した割り印が失敗した場合は、反対の左側へ捺し直しましょう。
- 割り印を失敗した場合:違う場所に割り印を捺し直せばOK
収入印紙が使用済みであることを証明するのが割り印の役割です。再使用できないようにしっかりと割り印が捺されていれば、捺し直してあっても問題ありません。
契約書や領収書を作り直し、印紙税の還付を受ける
割り印に失敗した場合、文書を新たに作り直すことも有効策です。
その際、使用する見込みのなくなった契約書や領収書は、税務署に申告することで印紙税の還付を受けることができますよ。
- 割り印を失敗した場合:文書を作り直す
※不要となった契約書や領収書は、税務署への申告により印紙税の還付を受けることが可能
詳細は、『国税庁ホームページ』を確認してみてくださいね。
割り印を捺さなかった場合の『過怠税』に要注意!
ところで、課税文書に収入印紙が貼られていなかった場合、『過怠税』が科されることをご説明しましたが、収入印紙を貼ったものの、割り印を捺し忘れてしまった場合は何か刑罰の対象となるのでしょうか。
割り印をしなかった場合について、『国税庁ホームページ』の記載内容を確認してみましょう。
「はり付けた」印紙を所定の方法によって消印しなかった場合には、消印されていない印紙の額面に相当する金額の過怠税が徴収されることになります。
つまり、割り印を捺さなかった場合、収入印紙を貼らなかった時と同様に刑罰の対象となり、文書に貼った収入印紙と同額の『過怠税』が徴収されることになります。
過怠税について、ここでもう一度確認しておきましょう。
- 収入印紙の未貼付の場合:納付すべき印紙税額の3倍
- 収入印紙の未貼付を自己申告した場合:納付すべき印紙税額の1.1倍
- 収入印紙の未消印(割り印忘れ)の場合:印紙税額と同額
尚、収入印紙を貼らなかった場合も割り印を捺さなかった場合も、故意か過失かに関わらず過怠税が徴収されてしまいますので注意が必要です。
収入印紙を扱う際は、文書にしっかりと貼りつけ、明確に割り印を捺すようにしてくださいね。
収入印紙の購入場所
「ところで、収入印紙ってどこで購入できるの?」
普段、収入印紙を扱う機会が少ないと、いざ必要になってもどこで手に入れればよいのか悩んでしまいますよね。
そこで最後に、収入印紙の購入場所を簡単に確認しておきましょう。
- 郵便局
- コンビニ
- 法務局・区役所・市役所
- 金券ショップ
- ネットショップやネットオークション
- 郵便マーク(〒)のついた個人商店など
収入印紙の代表的な購入場所は郵便局。取り扱っている収入印紙の種類も豊富です。
また、同様にコンビニも代表的な購入場所。24時間365日空いているコンビニも多いので、急に収入印紙が必要になった時にも安心ですよね。
その他、法務局や区役所・市役所、金券ショップや個人商店、Amazonやヤフオクなどといったインターネットで購入することも可能ですよ。
まとめ
収入印紙の貼り方は、一度覚えてしまえばとても簡単ですよ。
対象となる契約書や領収書に、剥がれることのないようしっかりと貼りつけ、後は、文書と収入印紙にまたがって割り印を捺すだけです。
割り印は、印鑑でも署名でもOK。ただし、必ず一見しただけで誰が捺したのか分かるようにすること、そして、消せないもので割り印を捺すことが重要ですよ。
尚、収入印紙を貼らなかったり、割り印を捺さなかった場合には、故意か過失かに関係なく過怠税を徴収されることになってしまいますので要注意!
収入印紙をしっかりマスターして、スマートに使いこないしましょう。
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